野反湖、旅の終わり ぐんま県境稜線トレイル(最終回)
(写真:野反湖の青)
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
(;゚Д゚)ノ
ぐんま県境稜線トレイルの旅の続きです。
前回は、ムジナ平を後にし、笹薮地獄を抜けて、再び県境稜線に立ったところまで書きましたね。
前回の旅はコチラ⤵
道が不明瞭な笹薮を過ぎ、ようやく道標も立つ尾根道に出ました。
しかし、緊張が解けたせいか、再び足裏に激痛が。
何とか濡れないようにケアしてきたのですが、朝から延々と続く藪漕ぎですっかり元の木阿弥となり、足はふやけ切ってしまいました。
足裏のしわがますます深くなり、しわ同士が擦れ合って、とても痛い・・
しかし、ぐんま県境稜線トレイルは、まだ全体の半分も進んでいません。
計画では、今夜は赤石山のふもとで野営する予定でしたが、それはもう不可能。
今日中に野反湖までたどり着かないことには、旅が続けられません。
そこまで出れば、キャンプ場もあるし、バス停だってある。
とにかく、前に進まなくては!
ということで、2019年8月12日、トレイルの旅3日目の続きです。
遠い遠い尾根
笹薮を脱し、見晴らしの良い尾根に乗ると、改めて感じるこのトレイルの長さ。
地図を見ると、恐らくここはムジナ平の北にある、大黒の頭という場所です。
ここから白砂山までの稜線には、5つのピークが存在しています。
上ノ倉山、忠次郎山、前沢山、上ノ間山、猟師ノ尾根ノ頭の5つ。
そして、白砂山から野反湖までには、猟師ノ沢ノ頭、堂岩山、地蔵山と、さらに3つのピークを越えなければなりません。
ぼくが持っている「2017年度版 山と高原地図」には、白砂山から野反湖までのルートしか記載されていませんが、この区間のコースタイムは3時間10分。
ここから白砂山まではルートの記載がなくコースタイムがわかりませんが、地図を見るかぎり3時間はかかると思われました。
現在時刻は10時20分。
そうすると、野反湖までは約6時間。
ただしこれは休憩の時間を含んでいませんから、これに+30分
いや、疲れているからもう少し休んでしまうかも・・・・じゃあ+1時間
そうすると、到着は18時前になると予想。
8月なので19時過ぎまでは明るいですが、やはりこの到着時刻は心もとない。
まして、足の裏が痛くて普段のようには歩けない状態です。
これは、ゆっくりしてはいられない!
(;゚Д゚) 焦る・・・!
ということで、とにかく前へと進みます。
なんだか再び笹が深くなってきた気がしますが、道はついてる。
足は痛いけれど、早足で行く!
笹薮が深く・・・・気のせいだ!
どんどん行くぞ!
・・・もしかして、また笹薮地獄がやってくるのでは?
いやいや、そんなことはない!
弱気になるんじゃない!
どんどん進もう・・・!
( ;´Д`)ひえー
こうなるとさすがに、速度を落とさなければいけません。
道に迷ったら、元も子もない。
焦る気持ちを抑え、慎重に進みます。
尾根線は、何があっても外さない!
足もとには、見えにくいですが、刈り取られた道の跡が残っています。
それでも、ところどころ不明瞭な箇所は、愚直に尾根をたどります。
少し眺望のきく場所に出ました。
雄大な稜線が南にくだり、そして緩やかに西へと伸びています。
一番右の、一番高く見えるピークが白砂山でしょうか・・・
( ;´Д`) 遠いっ!
本当にあんな場所までたどり着けるのか、という気になってくる。
さらに白砂山から先、野反湖までは3時間もかかるのです。
いかん、また弱気になってきました。
嘆いている暇はない、先に進まなければ!
そうするうちに、再び道が明瞭になり、道標の立っているピークに出ました。
道標の柱に「前沢山」と書いてあります。
とすると、白砂山までは、上ノ間山と、猟師ノ尾根ノ頭の2つのピークを越えればいいだけだ!
時刻は11時40分だったので、大黒ノ頭からは1時間20分かかりました。
これは見積よりも少し早いペースです。
よし、この調子を維持しよう!
白砂山に登る
と、思った矢先に、再び急な登りが立ちはだかります。
なんだ、こんな坂!
(;´Д`) うおー!
足は痛いけど、ガシガシと登っていく!
登りきると、植生が低木の密林に変わりました。
密生するシャクナゲが、その鞭のような枝で行く手を阻みます。
腕でかき分けながら突進!
再び道が分かりくくなってきた!
しかし、道跡はついています。
外さないように注意しましょう。
このあたり、地形が複雑で、道迷いしやすい地形です。
しかし、まだまだ遠いなぁ・・・
この稜線を下り、そして登り返すと、上ノ間山に到着しました。
時計を見ると12時30分。
左側がもと来た稜線方向ですが、いつのまにかガスに覆われていました。
そして、右側の白砂山方向にも、薄く雲がかかり始めています。
白砂山はもう目と鼻の先、がんばろう!
幸いにも、ここからは、よく整備された見晴らしの良い道に変わります。
稜線に沿って、遠くまでハッキリ道が見て取れます。
これは一日中笹薮地獄に苦しんだ身としては、嬉しい限り。
白砂山が近づいてきてこともあって、気持ち的には少しゆとりも出てきましたが、同時に足の痛みもひどくなってきます。
広々として気持ちのいい尾根です。
ただ、足がとても痛くなってきました。
白砂山に到着したら、10分ぐらい休んでもいいかな。
しかし、思ったより、白砂山までが遠い。
小さな登り下りが延々と続き、それを繰り返すたびに気力と体力が失われていく。
足の痛みはさらにひどくなってきて、次第に耐えきれないほどになってきました。
それでもまだ続く登りと下り・・・
だんだんと足を前に出すのが苦痛になってきます。
足裏が地面に触れるたびに、激しい痛みが。
;つД`) ううっ・・・
そしてさらに続く長い道。
気持ちがいいはずの広い尾根道も、もう楽しむ余裕がありません。
そしてまた登り。
一体この尾根はいつまで続くんでしょう。
執拗に続く尾根沿いの登り下りが、たまらなく辛い。
もう、半ば目をつぶり、何も考えないで歩き続けます。
止まって休みたいのですが、止まるともう歩く気力がなくなりそうなのが怖い。
とにかく先へ進みましょう。
そして、13時45分、とうとう白砂山に到着・・・
野反湖 もう歩けない
白砂山の山頂には年配の男性が一人いて、ぼくが現れると驚いた表情を見せました。
この方向から歩いてくる人間がいるとは、思っていなかったのでしょう。
ムジナ平方向へと続く道の入り口には、三坂峠で見た注意書きと同じ看板が立っていました。
さらによく見ると、朽ちて倒れた看板があり、「稲包山方面には登山コースがなく、立ち入ると遭難の恐れがあり大変危険」と書いてあります。
もちろん今では、ぼくが歩いてきたように道が整備されているのですが。
山頂には腰を掛けて休めるベンチがありました。
倒れこむようにして、そこに座ります。
ザックを下ろし、靴と靴下を脱いで、目をつぶる。
靴下を替えたいのですが、もう新しい靴下がありません。
ここから野反湖までは、あと3時間の道のりですが、果たして足が持つでしょうか。
10分ほど眠りました。
いつもなら、ほんの少しでも眠ると体力が戻り元気が出るのですが、今回は回復を感じられません。
もう3日も歩き続けて、今日は朝4時から10時間、ろくに休息も食事もとっていない。
足の痛みも相まって、体力・気力の減退がひどい。
こんなことは珍しいです。
いつもなら、どれだけ疲れていても、心の片隅はどこか楽観的というか、苦境を楽し余裕があるのですが、今回はそれがない。
再び靴を履き、野反湖に向けて歩き出したのは14時過ぎ。
何となく、白砂山からは下山するだけというイメージを持っていたのですが、ところがどっこい、まだまだ深い稜線が続いています。
とにかく、明るいうちに野反湖へ!
しかし、足が痛い!
もう、立っているだけで激痛です。
ここからは写真を撮る気力もなく、ただ機械のように感情を殺して進みました。
特に、野反湖手前の最後の1時間はとにかく苦しかったです。
というわけで、大変申し訳ないのですが、この間の写真が一枚もありません。
野反湖に到着したのは、17時55分でした。
登山口には広い駐車場があり、売店もありました。
夢にまで見た、自販機もあります。
建物の前には、ぐんま県境稜線トレイルののぼりがはためいています。
そして、建物の壁には、真新しいぐんま県境稜線トレイルの案内板がありました。
野反湖の位置は赤字で書いてありますが、このトレイルのちょうど中間点という所でしょうか。
ぼくは建物の前にあるベンチに座り、靴を脱ぎます。
足の裏の写真です。
不快に思われる方はどうぞ飛ばしてください。
⇩
ふやけ切って、真っ白に変わり、全面しわだらけになってしまいました。
このしわが擦れ合って、痛くて痛くてたまらない。
もう、これ以上は歩けない。
白砂山尽きかけていた気力は、少し蘇りつつありました。
あと2日旅を続け、終点の四阿山まで進む気持ちも復活していました。
でも、もう歩くことができないのです。
何だか悔しくなってきて、足をさすってみます。
足の裏は冷たくて、触っただけで痛い。
やはり、旅を続けることは無理です。
とてつもなく残念ですが、ここが引き際でしょう。
ベンチに座り、ぼんやりしていると、この3日間の旅の記憶がよみがえってきます。
谷川岳の賑やかな登りと、肩ノ小屋以降の孤独な稜線
不思議な音が聞こえた大障子避難小屋の夜
夜の不安な稜線を進み。
夜が明け、雄大な稜線のど真ん中を進みました。
この夜明けは、本当に生きていることを実感しました。
しかし、この後、足の濡れと疲労が顕著になってきました。
そして稲包山でのビバーク。
この後は、どこまでも続く笹薮に苦しみました。
苦しかったなぁ・・・
でも、見たこともない景色が広がっていて、素晴らしい旅でした。
また行くかと聞かれれば、また行きたい。
でもその前に、この旅はまだ未完の旅。
いつか完結させなければ。
翌朝、バスに乗るためにキャンプ場から再び駐車場に戻り、野反湖を眺めます。
湖水が深い青色をしていて、引き込まれそうな気がします。
周りを囲む山々の緑と鮮やかなコントラストが、夏を感じさせる。
ともかく、ぼくの冒険は、ひとまずこれで終わり。
そしてまたいつか、この場所から旅の続きを始めるつもりです。
その時まで、ぐんま県境稜線トレイルよ、さようなら。
すばらしい夏でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また。
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