『ドキュメント 道迷い遭難』が語るもの
(写真:羽根田治『ドキュメント道迷い遭難』山と渓谷社、2006年、表紙)
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
今回は「山の本、旅の本」シリーズです。
前回『一日の王』を紹介したのが3月。
その前の『世界最悪の旅』を紹介したのが1月ですから、このシリーズはご無沙汰でしたね。
前回の「山の本、旅の本」はコチラ⤵
さて、今回紹介する『ドキュメント 道迷い遭難』ですが、山を歩く人なら誰でも、このタイトルにドキッとすることでしょう。
低山・高山問わず道迷いは起こりうるし、さらに言えば、初心者・ベテラン問わず誰でも一度は程度の差こそあれ、山で道を間違えたり、迷ったりした経験があるでしょう。
つまり、誰にでも起こりうる遭難。
そんな身近な遭難がドキュメント形式で生々しく記述されているので、読んでいるうちに自分が遭難しているような気持ちになってきます。
ぜひ読んでもらいたい一冊です。
なぜ下ってしまうのか?
この本には7つの事例が紹介されています。
そのうち数例は十分に余力を残して下山していますが、その他の死の寸前まで追い詰められた事例にはいくつかの共通点があります。
それは、
➀ 道を間違えたことに気づいていながら、引き返していない。
② 下った結果、沢に入り込んでいる。
➀については、あとで触れるとして、まずは②について。
この本では、死の寸前までいった事例の全てが、山を下って沢に入り込んでいます。
そもそも、なぜ下るのか?
その大きな理由の一つは、山を下りたいという強い衝動です。
下れば集落があり、助かるという、このわかりやすい理屈。
特に、見下ろす先に集落や、町の明かりが見えた時には、このまま下れば大丈夫と信じてしまう。
つまりこういうことです⤵
彼の目には、真下に見える集落しか見えていませんが、実はその間には深い深い沢が存在している。
こんな感じでしょう。
しかし、ここを町の灯り目指してそのまま下って行けばどうなるか?
恐らく、彼は沢に入り込み、二度と出ることができなくなるでしょう。
この写真のように夜で、遠くに町の明かりが見えたらどうでしょうか?
まっすぐ降りていきたいとは思いませんか?
なぜ引き返さないのか?
この本の7つの事例では、全員が途中で道迷いに気付いています。
しかし、一例を除き引き返した人はいませんでした。
なぜでしょう?
引き返さなかった理由は人それぞれですし、なかには理性的に思えるものもある。
しかし、どんな理由があろうと、彼らは気付いた時点で戻るべきだったのです。
その理由について、著者の羽根田さんはこう書いています。
「それはたぶん、道迷い遭難が人の本能と願望の葛藤に起因するからだと思う」
それはどういうことなのでしょう?
「今たどっているルートが正しいものであって欲しい、という願望(略)。その結果、願望が勝ってしまう。かくして道迷い遭難が起きる」
これは説得力のある言葉。
危機に陥った時、最も人の心を支配するのは願望だと思います。
この事例でも、
「このまま行っても目的地に出るだろう」
「ここを引き返すよりは近道だろう」
「このまま行った方が確実だろう」
「この先に建物が見えているんだから大丈夫だろう」
これらは全て、その時の当事者には合理的な判断に思えていたものですが、全て願望にすぎませんでした。
その結果、彼らは沢に入り込み死の淵をさまようことになるのです。
「目的地に出るだろう」は願望にすぎません。
このように、危機に直面しながら、それを認めようとしない心理状態は「正常性バイアス」と呼ばれます。
羽根田さんはこう言います。
「道迷い遭難には、このように人の心の一番弱いところに原因を成すものがあるからではないか。そうでなければ、毎年多くの道迷い遭難が起きている説明のつけようがない」
そしてもし、道迷い遭難が羽根田さんの言うように「人の心」に原因があるのならば、それは低山・高山を問わず起こる可能性がある。
さらにいえば、山の経験を問わず、誰にでも起こりうる可能性があるのです。
人の心が原因ならば、道迷い遭難はどんな山であれ起こりうる可能性があるということでしょう。
むしろ、低山のほうが、こんな楽観的な願望が生じるスキが多いかもしれませんね。
低山での遭難についての記事はコチラ⤵
沢はなぜ危険か?
なぜ沢に入ってはいけないのか?
登山を始める前、ぼくはこれが一番疑問でした。
沢は必ず下へと下り、合流して川となり、川はやがて人のいる集落へと流れつくようになっている。
だとすれば、沢の存在そのものが、山から脱出する道なのではないかと思うわけです。
なぜこれをたどってはいけない?
その理由は、この本の全ての事例が沢に入り込み、そのうち2例を除いて沢から無事に脱出できなかったという事実が物語っています。
たいていの場合、沢はやがて両岸が切り立った崖となり、いつか滝となる。
それが例え数メートルの滝であっても、これを下ることは困難。
結果、進むことも、戻ることも、左右に逃げることもできず、袋小路に入り込んで死を迎えることとなります。
こんな袋小路では、ヘリで発見してもらうことすら難しい。
だから、 沢には入ってはいけないのです。
ならば、尾根を下れば大丈夫か?
これも違う。
尾根は下るにしたがって、数限りない分岐を繰り返し、やがて沢へと下っていきます。
下の図は皆がよくご存じの雲取山の尾根線です。
いかがでしょう。
少し東に登山道を逸れただけで、無数の尾根の分岐に遭遇してしまう。
このどれか一つでも、下り続けて無事に帰ることができるとは思いません。
これらの終点は全て沢です。
なら、下らずにもと来た道を登り返すことがベストだと分かるでしょう。
逆に言えば、尾根を登り返すなら、頂上に行くに従って道が集約し、迷うリスクは急速に減少していくということです。
沢を下ってしまった遭難事例⤵
最後に
この本は恐ろしい本です。
しかし、読み方によっては、恐ろしくない本ともいえる。
というのも、当然ながら、ここで扱われている事例は、みな生還者の事例だからです。
読み方によっては、迷いはするかもしれないが、結局は助かるようにも見える。
しかし、著者の羽根田さんも書いていますが、あくまで彼らは「運が良かっただけ」。
道を間違えたとき、
いかに人は戻ろうとしないか、
いかに楽観的な願望にすがるか、
いかに通常ではしないような判断をするか、
そして、いかに沢に入り込み、逃れられなくなるか。
ぜひ、そのプロセスを読んでほしい本です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また。
(´・ω・`) バイバイ
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宝登山、そして長瀞渓谷へ
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
(* ´ ω`)ノ
前回は、水潜寺から破風山に登り、風戸の集落までの旅を書きましたね。
前回の旅はコチラ⤵
今回は、風戸入口バス停から、次の「長瀞の自然と歴史を学ぶみち」起点となる根古谷橋バス停までの連結区間を経て、宝登山に登り、長瀞(ながとろ)渓谷までの旅です。
ルートの詳細はコチラ⤵
それでは、旅を続けましょう。
長いなぁ、舗装道
さて、風戸入口バス停に到着したのは11時40分でした。
ここから「長瀞の自然と歴史を学ぶみち」の起点となる根古屋橋バス停までは、1kmほどの 連絡区間になります。
ということは、こういう感じの車道脇を通るということか。
けっこう車の通行が多いです。
ただでさえ狭い路側帯が枯葉で隠れてしまっているし、崖が近いのでスペースに余裕がないよ。
気をつけて行きましょう。
20分ほど進むと、大きな交差点が見えてきた。
この右手の橋を渡ったところに根古屋バス停がありました。
ちょうど時間は12時です。
一休みにはうってつけのバス停なので、ちょっと休憩。
舗装道を歩くと、路面が固いせいか、なんだか疲れが早い気がする。
;つД`) 足の裏が痛い・・・
ここからは「長瀞の自然と歴史を学ぶみち」に入るのですが、宝登山の入り口となる山形バス停までの2kmほどは舗装道のようです。
ううっ・・・
そして再び、舗装道の旅が始まる。
あと2kmぐらいとはいえ、長いなぁ。
ちょっと疲れてきた。
うーん、長い・・・
橋のたもとの文字が「しゅん坊」に見えた。
疲れてるんだな・・・
20分ほど歩くと、「山形」と書いてあるバスの停留所を発見
ここが山形バス停だな。
でも、山へ入るような道が見当たらない。
もう少し歩いてみる。
すると、道路の右手に小さな橋が架かってました。
ここが宝登山への入り口のようです。
やれやれ。
ようやく山道だ!
宝登山は楽しい
宝登山への道は、のどかな畑の中の道から始まります。
子供のころは、こんな場所でよく遊んだよ。
畑の中で野球したり、畔を崩したりしてたけど、よく怒られなかったなぁ。
なんでだろう?
畑を抜けると、次第に登りがきつくなってきます。
かと思うと、突然、開けた原っぱに出たりする。
さらに進むと、どうやら本格的に宝登山の取り付きに入ったらしく、斜度が急になってきました。
長い階段だー
でも、舗装道よりははるかにいいや。
階段が終わっても、急な登りは続きます。
このあたりから、遠くで子供の声が聞こえてきます。
どうやら、宝登山の頂上が近いのでしょう。
宝登山は頂上までケーブルカーが通じていて、小さな子供でも登って来れるのです。
その通り、このあと長い階段を登りきると、山頂に到着。
13時05分でした。
たくさんの人が腰を下ろし、お弁当を食べたり、おしゃべりをしたり。
みんな楽しそうです。
宝登山も標高こそ高くありませんが、見晴らしがいいのです。
ほら。
写真がうまく撮れていませんが、正面に見える三角形の山は武甲山です。
そして、足元に広がる街並みが秩父市の中心部。
見晴らしばかりじゃない。
山頂には蝋梅園もあって、黄色い花がきれいに咲いてましたよ。
もう、春はすぐそこだ。
山頂を少し下ると、宝登山神社があります。
素朴な社殿ですね。
小さな境内にはお茶屋があって、休む場所があります。
石鳥居の向こうには秩父の山並みが広がっていました。
鳥居をくぐり下っていくと、園地が広がっています。
つつじ園もある。
2月だったので花は見ることができませんでしたが、春にはつつじの花で山が覆われてキレイだろうな。
どうやら、他にも小動物園などがあるようです。
ケーブルカー乗り場の近くには売店が並んでいました。
お腹もすいたので、秩父名物「みそポテト」を食べますよ。
ほくほくして美味しかった!
(*´ω`*) ウマー
長瀞へと下る
ずっと遊んでいたくなるような楽しい山頂でしたが、そろそろ行きましょうか。
下ること20分少々で、ふもとの宝登山神社に到着
立派な鳥居だ。
ここの鳥居は赤ではなく白なんだ。
白もなかなか神々しくていいですね。
参道の先には、再び大きな鳥居が立ってる。
すごく良い雰囲気の町だなぁ。
歩いているだけで、すごく楽しい!
長瀞駅は、レトロな感じのステキな駅舎です。
これもまた、いい雰囲気!
うん、いい街だ!
そして長瀞渓谷へ
駅の脇には踏切があり、その向こうには土産物屋の並ぶ小路が。
キョロキョロしながら歩いていくと、すぐに長瀞の渓谷に到着。
川下りの船着き場が。
実はこの川、荒川なんですね。
都心を流れる荒川とは全然違う川に見える。
この水は、どれだけ長い旅をして海まで行くんだろう。
そう考えると思わず「おおーぃ。元気でなーっ」と呼びかけたくなる。
だって、同じ旅する身だもの。
流れる水とは逆に、ぼくは上流に向かいます。
船着き場のなだらかな河川敷とはうって変わって、奇岩・巨石が列をなします。
そして次第に、両岸は切り立った岩壁に。
船着き場にはたくさん人がいたのですが、このあたりになると人影はありません。
道標はこの辺りにはないのですが、この方向ですから岩の上を歩いていきましょう。
この辺りの岩は、不思議な模様をしています。
細かい縞が入っていて、まるで生き物の皮膚のよう。
この面白い模様の岩は、虎の模様に似ていることから「虎岩」と呼ばれるそうです。
宮沢賢治もこの地を訪れて、虎岩の歌を詠んでいます。
つくづくと
「粋な模様の博多帯」
荒川岸の片岩のいろ
なるほど、たしかに粋な模様に見える!
岩の上の道は、やがて笹薮の道に変わり、
そして、明るく開けた林に変わります。
そろそろ、旅の終わりの雰囲気です。
渓谷で始まり、渓谷で終わった旅。
でもその間には、将門伝説の残る城峰山があり、秩父華厳の滝があり、結願時の水潜寺があり、巡礼道があり、皆で楽しめる宝登山がありました。
この短い距離の中に、なんと豊かな多様性が含まれているのでしょう。
埼玉の奥深さを感じた気がします。
そんなことを思いながら歩いていると、やがて駅に着きました。
上長瀞駅です。
時間は15時10分でした。
2月の日の暮れは早い。
こんな時間でも、すでにもう夕方の気配です。
さあ、帰ろう。
次の旅は、どんな景色が待っているんだろう。
もう、すぐにでも旅に出たい!
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、さらに秩父の山地を南へと進みますね。
次回の旅はコチラ⤵
ではまた
(^ω^)ノ バイバイ
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破風山は低山の名山
(写真:「秩父盆地を眺めるみち」破風山頂上)
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
(^ω^)ノ
前回は城峯山で野営をし、次の日、山を下って秩父華厳の滝から水潜寺の入り口までの旅を書きましたね。
前回の旅はコチラ⤵
今回は、水潜寺から「秩父盆地を眺めるみち」に入って、破風山(はっぷさん)に登る旅のことを書きますね。
細部のルートはコチラ⤵
ということで、2019年2月17日の旅の続きです。
クマが出ますよ、とお坊さん
水潜寺に到着したのが9時40分。
本堂へ至る坂道には、ずらりと石仏が並んでいます。
日本百観音、と石に刻んである。
本堂前の解説板で知ったのですが、水潜寺は日本百観音霊場(秩父、坂東、西国)の結願寺(最後のお寺)という、由緒あるお寺なのです。
決して広くはない境内ですが、結願寺らしく立派なお堂です。
しかも、住職さんがすごく親切でした。
ぼくの姿を見て、「これから山ですかー?」と気さくに話しかけてくれます。
はい、と答えると、引き続きさわやかな笑顔で、
(^O^)/「クマが出ますからねー。 この前も出ましたからねー」
とのこと。
まるで妖精でも見つけたかと言わんばかり。
その爽やかさに、思わずこちらもニッコリ笑顔に。
(^ω^) あれっ?
境内の奥がそのまま破風山への登山道につながっています。
「クマ注意」かぁ・・・。
やっぱり冗談じゃなかったんだ。
注意して行こう。
飲みかけのペットボトルをギュっ、ギュっと握ると、バリバリという音がします。
あと、時々手のひらをパン、パンと打つ。
こういった音は自然界にはないために、動物にとっては「目立つ」音らしいです。
できるだけ遠くで避けてもらえるよう、こういった音をたてながら進みます。
巨石に囲まれた道を登っていきましょう。
振り返ると、水潜寺が谷の向こうに。
森の中の寺、という感じで風情がありますね。
深山を越えてたどり着いたお寺には、昔の巡礼者もさぞ感慨深かったことでしょう。
登っていくとまた、「熊出没」の標識
もう一度、手を大きく叩き、熊鈴を揺すり、ペットボトルを握ります。
パン、パン!
チリン、チリン!
バリバリ、バリバリ!
クマさん、ちゃんと聞こえてるよね?
巡礼のみち、歴史のある峠
岩がゴロゴロところがる道を登っていきます。
殺風景な登山道に見えますが、ここは歴史のある巡礼道。
夏なら、緑豊かな谷間なんだろうな。
残念ながら2月の山なので、木々は葉が落ちて枯れ枝の森になっている。
それでも、谷底を抜け登るにしたがって、道は明るい雰囲気になっていきます。
峠が近いのでしょう、空が見えてきました。
さらに登ると、どうやら尾根線らしき地形が。
よしっ!
あと少しです。頑張って登ろう。
よいしょ、よいしょっ!
そしてようやく、破風山と水潜寺を結ぶ立札峠(たてふだとうげ)に到着
昔、秩父をめぐる巡礼は、全長約100kmの道のりを5夜ほどかけて巡ったらしい。
水潜寺は最後の札所だから、この峠は巡礼の越えた最後の峠だったわけです。
歴史のある峠らしく、古い道標石が置かれていました。
巡礼たちはこの道標を見て、旅の終わりが近いことを感じたことでしょう。
その気持ち、よく分かるなぁ。
破風山から秩父盆地を望む
さて、立札峠から破風山へは、陽当りのいい、明るい登り道です。
20分ほど登れば、もう山頂が見えてきました。
開けていて、眺望がよさそうな山頂だ。
(=^ω^) わくわく
自然と、足どりが速くなります。
で、破風山の山頂に到着!
( ^ Д^) おおー!
秩父盆地が一望!
標高こそ625mの低山ですが、見晴らしは抜群!
時計は10時55分。
お昼にはちょっと早いですが、この景色を見ながら食事をしましょう。
ザックを下ろし、とっておいたパンを頬張る。
うーん、最高!
破風山は、別のルートから登れば鎖場などもあり、いろいろと楽しめるルートがそろっています。
歴史あり、見晴らしあり、歩きごたえのあるルートありで、まさに低山の名山!
ぜひ、みなさんに訪れて欲しい山です。
風戸集落への下り
パンも食べ終わり、しばらく休憩もしたので、名残惜しいですが山を下り、このルートの終点、風戸入口バス停へと向かうことにしましょう。
しばらくは、秩父盆地を眺めながら、気持ちの良い尾根歩き。
稜線上には岩も多く、細尾根もところどころ。
正面に見える大きな岩は、「猿岩」という岩です。
猿岩を過ぎると、道は下り尾根に変わる。
尾根の鞍部に、道標が立っています。わかるかな。
風戸の集落へはこの左手の谷へと降りていきます。
どんどん下っていきましょう。
谷間に入ると、やはり日陰となるので少し寒い。
こんな感じの道を下って行くと、突然開けた場所に出ました。
家の庭先のようですが、廃屋になっています。
しかし、どうやら風戸は近いようだ。
さらに進むと、集落が見えてきました。
風戸の集落です。
とても静かでした。
猫の子一匹、見当たりません。
なんだか別世界に来たようだ。
誰一人気配のない畑の脇に道がある。
林の中を通り抜けると、今度は人の気配のする集落が見えてきました。
トタン板で仕切られた裏山風の道を下ります。
この道を、出口側から見てみるとこんな感じ。
道標が立っているとはいえ、あまり道に見えないので見落としてしまいそう。
このすぐ先に、大きな舗装道があり、そこが「秩父盆地を眺めるみち」の終点、風戸入口バス停でした。
この近くには、満願の湯という温泉がありました。
破風山の登山なら、ここで終えるのもいいかもしれませんね。
この時、11時40分。
実を言うと、今日はここで終わって、温泉に入ってビールを飲もうかと、すこし心が揺らぎました・・・
(*´ω`*) エヘヘ・・・
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
ではまた。
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秩父にも華厳の滝がある
(写真:秩父華厳の滝にある不動像)
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
( ^ ω ^ )
前回より「混沌の埼玉編」がスタートしましたが、今回はその続きです。
群馬県境の登仙峡を起点に埼玉県に入り、城峯公園を経て城峯山に登り、城峯神社にある城峯山キャンプ場で野営したところまで書きました。
(なんだか城峯ばっかりだな・・・)
前回の旅はコチラ⤵
ルートの詳細はコチラ⤵
今回は、城峯神社を出発し石間峠から「将門伝説を探るみち」の終点となる西門平バス停へ下ります。
そこから「秩父盆地を眺めるみち」の起点、水潜寺までの連結区間を進みましょう。
ということで、2019年2月17日の夜明けがやってきました。
朝日に染まる道
旅の朝は早い。
日の出前から起きて、ツェルトを撤収。
真冬とはいえ、たっぷり着込んで寝袋に入り、保温シートを何枚も重ねれば、結構ぐっすり眠れます。
ただし、一歩ツェルトの外に出ると、とてつもなく寒い!
だいたい片付け終わったころ、東の空が明るくなってきました。
まるで水墨画の世界…
ところで、結局キャンプ場の人は現れず、お金を払うことができなかった。
なので、一晩停まった旨と携帯番号をメモに書き、お金と一緒に社務所の玄関に挟んでおくことにしました。
時刻は6時30分、それでは出発しましょう。
鳥居をくぐり、神社を後にする前に振り返って一礼。
「無事に一晩過ごさせていただき、ありがとうございました」
( ´∀`) ペコリ
城峯神社を出ると、まずは石間峠へ向かいます。
どんどん明るくなってきた。
朝日に照らされ、木々がバラ色に染まる。
暗闇が拭い去られ、あらゆるものが甦り始める瞬間。
昔の人が、太陽を信仰した気持ちがよくわかるなぁ。
石間峠には6時55分に到着
実はこの峠は昨日も通っていて、左手の坂を登っていくと城峯山の山頂に続きます。
今日は右手側、東屋の脇にある道を進みましょう。
朝日は昇りましたが、まだ森の中は薄暗い。
日が当たらないと、一気に寒さを感じます。
西門平バス停までは下りかと思いきや、途中けっこう急な登りが。
長い階段だなぁ・・・
振り返ると、城峯山が朝日に照らされていました。
頭にちょこんと乗った展望台が、よく似合っている。
もうあちらは、すっかり昼の世界。
西門平へのトリックルート
いくつかのアップダウンを繰り返し、7時20分に鐘掛城というピークに出ました。
なかなか、いわくありげな名前です。
昔はここに城があったのかな?
それにしては、すこし山奥すぎるような気もしましたが、どうなんだろう。
鐘掛城を過ぎると、完全に下り尾根。
ところどころ雪の残る道を、気持ちよく進んでいきます。
こうして30分ほど下っていくと、少し幅広い林道に出ました。
で、実はここをまっすぐ行ってはダメで、ガードレールの左わきの小道に入ります。
写真には写っていませんが、道標があります。
しかし、小道の入り口は荒れていて、一瞥しただけではなかなか道とわかりにくい。
ちょっとトリッキーな感じになっています。
ここを下っていくと、再び道幅のある林道に出ました。
道標がしっかり立っていて、右を差してる。
で、右側にはカーブを描きながら林道が続いている。
ここを進んでいけば、西門平バス停に着くような気がします。
だが、しかし!
この道標を曲がって10mぐらいの距離に、林道から外れる山道を発見!
ここです。わかるかな。
実は、この林道は正しいルートではなく、左側林の中に道があります。
分岐のあたりに、かすかに赤テープが下がっているのが見えるかな。
(;゚Д゚) うーん!
道標があると、反射的にしばらくその方向を維持しようとするし、その方向にしっかりした道が伸びていれば、なおさらです。
ここはかなりトリックルートでしたね。
やはり、ふれあいの道は基本的に時計回りのルート設定なので、ぼくのように反時計回りで進むと、こんな感じで分かりにくい箇所がいくつもあります。
気をつけて行きましょう。
秩父にも華厳の滝がある
この左側の道を進むと、沢沿いの道に出ました。
道の脇に「西門平」と書かれた板が置かれている。
どうやら、道は間違ってなかったようです。
(^ω^) よしっ!
しばらく進むと、小さな神社が見えてきました。
どうやら集落に着いたようです。
とすると、バス停も近いのでしょう。
予想通り、集落を抜けると太い道路に出て、西門平バス停が見つかりました。
なかなか立派なバス停です。
時刻は8時15分でした。
ここから、次の「秩父盆地を眺めるみち」の起点までは、2km少々の連絡区間。
途中、「華厳の滝」という場所があるらしい。
少し楽しみです。時間があれば寄ってみよう。
こんな感じの道が、結構長く続きます。
歩いたり、走ったりしながら、45分ほどたったころ、前方に建物を発見。
時間は9時ちょうどです。
建物の上部には「秩父華厳の滝茶屋」と書いてある。
どうやら、ここが秩父華厳の滝らしい。
建物の脇には、滝への入り口がありました。
なんと、全国10位に選ばれているらしい。
しかしなぜか、日光の華厳の滝は入っておらず、なんだかランキングそのものが怪しいぞ・・・
「日光の華厳の滝により規模は小さいが、美しさでは引けを取らない」
って、わざわざ書いてあるところも怪しい・・・
そんな疑惑を抱きながら、滝のほうへと登っていきます。
すると、滝の全景が見えてきました。
( * ´Д`) おっ! きれいだ!
落差は10mを少し超えるぐらいで、規模は日光に及ぶべくもないですが、豊かな流れが緑の滝つぼへと吸い込まれていく様子は、確かに美しい!
疑ってすいません・・・
滝の上には、なんだかユーモラスな不動明王像が。
金髪に青い目が、なんともファンキー。
と、ここで携帯に電話がかかってきます。
キャンプ場からでした。
何のサービスもしなかったので、お金はお返ししますとのこと。
しかし、キャンプ場に泊まったのは事実なので、受け取ってくださいと答えます。
すると、キャンプ場の方は、しばらく考えた後
「では、神社へのお参りとして、お賽銭としてよいですか」とのアイディア
なるほど、昨夜あんなに安心して過ごせたのは神様のおかげだし、それは名案に思えました。
「どうぞよろしくお願いします」
キャンプ場の方の誠実さも伝わりましたし、なんだか晴やかな気持ちになりました。
なんだか嬉しくなって、華厳の滝を後に旅を続けます。
次のルート「秩父盆地を眺めるみち」の起点、水潜寺を目指しましょう。
20分ほど道を下ると、谷間が開けてきました。
このあたりかな。
やはりそうでした。
「秩父盆地を眺めるみち」の起点、水潜寺の前にある、札所前バス停を発見
このバス停の正面が、水潜寺の入り口です。
入ってみると、ずらりと石仏が並んでいました。
では、行きましょう!
この向こうの破風山を越えれば、もう長瀞渓谷はすぐそこです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、破風山を越える旅を書きますね。
次回の旅はコチラ⤵それでは、また。
(* ´ω`*)ノ バイバイ
どうぞ読者になって下さい⤵
さあ行こう! 埼玉の旅
(写真:「将門伝説を探るみち」:暮れていく秩父の山並み)
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
今回から、関東ふれあいの道一周の新章、「混沌の埼玉編」の開始です!
前回は三波石峡に到達し、とうとう群馬・埼玉の県境を越えたところまで書きました。
前回の旅はコチラ⤵
1年4ヶ月かかって旅した群馬ともお別れ。
今回から、いよいよ埼玉の旅がスタート。
これまでの旅の全体像はコチラ⤵
赤がこれまでに旅した道、青が今回の旅です。
それでは、今回の旅の詳細ルートを見てみましょう。
まずは、前回終了した登仙峡を起点に「将門伝説を探るみち」14.3kmに入ります。
神流湖を一望する城峯公園(じょうみねこうえん)から秩父の山域に入り城峯山へ。
城峯山には城峯神社があり、ここにキャンプ場があるので、今日はここで野営。
翌日、西門平バス停まで下り、「将門伝説を探るみち」は終わり。
ここから2km少々の連絡区間を挟み、水潜寺正面の札所前バス停から「秩父盆地を眺めるみち」になります。
破風山を越え、風戸入口バス停までの4.3km。
ここからまた1kmほどの連絡区間を挟み、地図には記載していませんが根古谷橋バス停という場所から「長瀞の自然と歴史を学ぶみち」がスタート。
宝登山(ほとさん)を越え、長瀞(ながとろ)渓谷を経て上長瀞駅までの8.8kmで終了。
全て合わせると、30kmを少し超えるくらいでしょうか。
ということで、2019年2月16日から17日にかけて旅しました。
城峯公園から群馬にお別れ
群馬・埼玉県境は秘境です。
ということで、スタート地点の登仙峡に到達するまでがまず一苦労。
JR群馬藤岡駅からバスに乗って、鬼石(おにし)という町まで出て、その後さらに町営バスに乗り換えて登仙峡へ。
このバスの乗り換えが1時間ぐらいある。
なので、5時間ぐらいかかって登仙峡に到着。時間は11時過ぎとなりました。
到着がこの時間帯だと、どうしても野営になってしまいますよね。
歩き出す前に、もう一度振り返って、群馬県にさよならを告げよう。
「さよなら、群馬! 旅を続けるよ!」
と、颯爽と歩き始めたその時、橋の脇になにやら発電所の遺構を発見。
ちょっと興味深かったので寄り道してみます。
中はがらんとして、廃墟になっていました。
窓がたくさんあって、明るい日差しが差し込んでいます。
そのせいか、あまり廃墟特有の不気味さは感じませんでした。
ふたたび橋のたもとに戻り、改めて出発。
城峯公園までは、しっかりした舗装道が多いです。
2月ですが、日差しが暖かくていい天気だ。
蝋梅が鮮やかに咲いていて、目を楽しませてくれます。
このあたり一帯は、かつて平将門が根拠地にしていた土地らしく、いくつかの伝説が残っているそうです。
例えば、鯉のぼりをあげると、不吉なことが起きるらしい。
城峯公園までは、1時間弱で到着。
ちなみにここは、冬に咲く不思議な桜で有名なところです。
今は2月だったのでもう散ってしまったのですが、10月中旬~11末頃はお勧め。
公園の展望台からは、前回の旅で湖岸沿いを歩いた神流湖(かんなこ)が一望です。
その上を歩いて渡った下久保ダムの堤も見える。
向こうの山並みは群馬。
ぼくは、その向こうの、向こうの、さらに向こうから歩いてきた。
ザックを下ろし、しばし景色を見ながら、これまでの旅に思いをはせました。
そして、これで本当に群馬とはお別れ。
これからは、違う景色が待っている!
城峯山から秩父を一望
城峯公園を下ると、20分ほどで宇那室バス停に到着。
このまままっすぐ進み、城峯山へ向かいます。
しばらく、舗装道の登りが続きますが、やがて登山道の入り口が出現。
いつ見ても「熊出没注意」の警告は、身が引き締まります。
入口の鉄柱に、無造作にふれあいの道の表示が取り付けられていました。
まずは、荒れた感じの階段から山に入っていきます。
しばらく進むと、沢が現れました。
道は沢沿いに伸びていきます。
物音ひとつない山中に、水の流れる音だけが響きます。
何度も沢を渡りながら、少しづつ山を登っていく。
城峯公園ののんきな暖かさとは一変、水の冷たさが谷に満ちている。
1時間ほど沢沿いに登ると、「跨ぎ仕舞い」という場所に出ました。
どうやらここで、沢沿いの道は終わりらしい。
ということは、山頂が近くなってきたかな。
登りがきつくなり始め、樹間に明るさが出てきます。
さらに登ると、いったん道は舗装道に出ます。
ところどころ凍った道を登っていくと、再び城峯山山頂へと続く登山道に入ります。
最後の急な階段の向こうにはアンテナが建っているのが見えました。
どうやら山頂に着いたようです。
時間は14時40分でした。
アンテナ塔は展望台になっていて、登ることができます。
もちろん、登りますよ。
すると、秩父の山地が一望です。
(*´Д`) うわー、いい景色!
奥秩父の山並みも、尾根の一本一本まで見えるぞ。
城峯山は標高1037mと、それほど高くはありませんが、周囲360度が見渡せます。
城峯神社の夜はふけて
風が強くなってきました。
展望台に登っていると、カメラを持っていかれそう。
寒さも感じたので、展望台を降り、この下の城峯神社へと向かうことにします。
30分ほど下ると、青い屋根が見えてきました。
あれが城峯神社でしょう。
時間に余裕があったので、少し寄り道をして、この近くにある「天狗岩」へと登ることにします。
追い詰められた将門は、この岩に隠れたという伝説が残っています。
岩の上には小さな祠がありました。
伝説とはいえ、将門はここで何を思ったのでしょうか。
城峯神社に到着したのは、15時30分でした。
今日はここで終了。
なんと、城峯山キャンプ場は境内にあります。
さっそく野営の準備に取り掛かり・・・と思ったのですが、境内はおろか、社務所にも人影はありません。
(;´Д`) オーイ
何度も呼び鈴を鳴らしたり、呼ばわってみましたが誰もいません。
仕方がないので、とりあえずキャンプ場にツェルトを張ります。
神社の人が来たら、説明してお金を払うことにしましょう。
しかし、待てど暮らせど、誰も現れません。
次第に、山なみは宵闇に包まれていきます。
気にはなりますが、もう日が沈むので夕食の準備をしよう。
今晩は、水炊きですよ!
(^ω^) うまそう!
そういや、いつも水炊きだな。
赤城山の旅でも、水炊きを作ったっけ。
その時のことはコチラ⤵
〆は、ラーメン投入っ!
(*´ω`*) ハァー 幸せ
すっかり体も温まり、お腹もいっぱいになりましたよ。
見上げると、大きな月が出ています。
そして、あたりはすっかり闇に包まれました。
こうして夜の山で一人でいると、大きな自由を感じます。
と同時に、一人であって、一人でないような不思議な感覚。
それが緊張感の時もあれば、なにか親しげで安心を感じるときもある。
この感覚は、ありとあらゆるモノに魂や神性が宿っているという原始的な感覚に近い。
城峯山には、何か安心を感じるような雰囲気がありましたよ。
夜にこんな気持ちを感じた時の話はコレ⤵
ついでに言うと、笠間城では全く逆の感覚でした。
笠間城の話はコレ⤵
ぼくはしばらくの間、その優しい闇に身を任せて、月を見上げていました。
そして、夜も更けたころ、ツェルトに潜り込みます。
おやすみなさい。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回は、大峯山を下り水潜寺まで向かう旅のことを書きますね。
次回の旅はコチラ⤵
ではまた。
どうぞ読者になって下さい⤵
三浦半島縦走の旅(終) そして海へ
(写真:津久井ヶ浜の海岸)
どうぞ読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
(= ^ω^)ノ
三浦半島縦走の旅も、いよいよ最後の山地部を残すばかりとなりました。
前回は、大楠山から南の尾根を下り、沢山池(たくさんいけ)に出たところまで書きましたね。
前回の旅はコチラ⤵
今回は、沢山池から平地部を抜け、第三の山地部に入り、武山(たけやま)から三浦富士を下り、目的地の津久井ヶ浜まで到着します。
それでは旅を続けましょう!
沢山池から武山の市街地へ
大楠山からの下りは登山道の設定がなく、最後はヤブ漕ぎとなり、かなり大変でした。
そんな密林地帯を抜けると、突如として沢山池が出現
さっきまでの里山地獄がウソのように、のどかに家族連れが遊んでいます。
ぼくもほっと一息です。
迷うことなく、無事に下りられてよかった。
しかしここで、雨が降り始めます。
沢山池の水面にも、雨で波紋が浮かびます。
わりと大きな雨粒で、しっかり降ってきたので、雨衣を着ることにしました。
見上げると青空が見えているので、すぐに止むでしょう。
雨対策を整えると、改めて出発。
沢山池から5分ほど歩くと、市街地が続きます。
まだパラパラしますが、雨は早くもあがりました。
坂の向こうに、目指す武山(稜線の右)と三浦富士(同じく左)が近づいてきます。
この坂を下ると、武山の住宅地に入ります。
このあたりは、しっかり地図を見ておかないと迷いやすい。
ぼくの場合、一番迷いやすいのは山ではなく、町中だったりする。
都心だと、子供以上に迷ったりします。
ここを右に曲がり、住宅街を抜けていく。
さらに15分ほど歩くと、ようやく武山の登り口が見えてきました。
正面に見える小高い山が武山です。
武山の山頂には「武山不動」というお寺があり、そこまで参道が通じています。
武山不動で雨宿り
市街地を抜け、ようやく登りに入りました。
しっかり舗装された歩きやすい道です。
途中には、ベンチや杖も置いてありましたよ。
木々の間からは、武山の市街が見えます。
正面に見えるのは、自衛隊の武山駐屯地です。
道は歩きやすいのですが、再び空模様が怪しい感じに。
雲が黒く、低くなってきた。
遠くで雷が鳴り、風も出てきます。
どうやら、本格的に雷雨が近づいてきたようです。
急ぎましょう!
ドーンという音がしました。
どうやら近くで雷が落ちたようです。
(((*´Д`))) ヒエー
武山山頂には15時30分に到着しましたが、到着と同時に激しい雨。
写真では分かりませんが、大きな雨粒です。
仕方ありません、少しお堂で雨宿りさせてもらいましょう。
お堂の軒下に入り、腰を下ろします。
遠くでは、ひっきりなしに雷鳴が聞こえる。
屋根や地面を激しく打つ雨の音が、山頂に響く。
圧倒的な音響に包まれているのですが、逆にそれが静けさを感じさせました。
気持ちが落ち着きます。なぜでしょう。
奇妙な音が聞こえる
20分ほどお堂の軒下で座っていると、雨がやみました。
不動様にお礼を言って、旅を続けることにします。
お堂を下った境内には、人が集まっていました。
何か食べたいと思いましたが、どうやら片付けに入っているようでした。
左側のフェンス脇に小道が伸びていますが、三浦富士へはこちらに進みます。
まずは、長い階段を下りましょう。
途中、展望台がありました。
すこし、景色を眺めて行きましょう。
もう、海はすぐそこです。
西側(写真の右手)には、再び黒雲が迫っています。
恐らく、すぐにまた三浦半島は雨域に入るでしょう。
なんとか、追いつかれずに下山できればいいのですが。
こうして登山道を急いでいると、少し気味の悪いことがありました。
路上に立ち止まって写真を撮っていると、突然、耳元で
ハッハッハッ、と荒い息遣いが聞こえたのです。
獣の呼吸のよう。
イノシシか? と思い、あたりを見回しましたが、それらしい様子はありません。
人間はもちろん、動物の気配もない。
慌ててブレてしまいましたが、その時の写真です。
振り返っても、薄暗い山道が、ただ続いているだけ。
しかし、この息遣いは耳元ではっきりと聞こえる。
実は、この奇妙な音は、森戸川の渓谷でも聞こえたのでした。
次第に、この荒い息遣いの音が大きくなってきます。
少し恐怖を感じ、走ってその場から立ち去る。
走りながら振り返ったのですが、何も追っては来ませんでした。
しかし一体、あの音はなんだったのでしょうか?
今でも気になります。
息が切れるまで走って、ようやく三浦富士の山頂に到着。
16時15分でした。
もうあの奇妙な音は聞こえませんでした。
そして海へ
三浦富士の山頂で、残念ながら再び雨が降ってきました。
ザックから雨衣を取り出し、身につける。
さあ、最後の下りです。
10分ほど下ると、ようやく山が終わりました。
キャベツ畑の向こうに海が見えます。
雨はもう嵐のように激しくなってきました。
海のほうでは雷鳴と稲光が。
ようやく市街地に降りたときには、もはや大雨です。
この時、時間は16時30分でした。
ちょうど屋根のある場所があったので、もう一度雨宿り。
鉄板の屋根なので、打ちつける雨音が凄まじい。
武山不動尊のような静けさは、みじんも感じることができません。
しかし、雨宿りできて助かりました。
ザックを下ろし、少し休みます。
雨はちょうど17時にやみました。
さあ、海はもうすぐそこです。
津久井ヶ浜の集落に入りました。
雨傘のなかで、女性が楽しそうにおしゃべりしています。
ぼくも楽しい気持ちになってきました。
そしてとうとう、道路の向こうに海が!
もう、気持ちの高まりが抑えられない!
青信号を待って道を渡り、海岸へ駆け降りる。
そして目の前に!
海!
とうとう着いた!
着いたぞっ!
海水に手を触れてみる。
その冷たさが旅の終わりを実感させます。
ぼくの興奮をよそに、波は静かに打ち寄せ、水平線の向こうで微かに遠雷が響いていました。
たった一日、40kmに満たない距離ですが、何といろいろなことがあった旅でしょう。
イノシシの罠にはまり、ジャングルトレイルを抜け、尾根から海を臨み、山から三浦半島を一望し、里山地獄をくぐり、お堂で雨宿りをして、奇妙な声を聞き、そして、海。
しばらく、砂浜に立ち尽くし、今日の旅路を振り返ります。
本当に幸せな気持ちでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
よければ「関東ふれあいの道一周」も読んでください⤵
ではまた。
どうぞ読者になって下さい⤵
三浦半島縦走の旅③ 大楠山から難所を越えて
どうか読者に!⤵
みなさん、こんにちは。
(*´Д`)ノ
「三浦半島縦走の旅」の続きです。
前回は、二子山から乳頭山、畠山へと連なる尾根線を下り、集落に出たところまで書きましたね。
前回の旅はコチラ⤵
今回は、不動橋から阿部倉温泉を通り、この旅の二つ目の山地部、大楠山を越え沢山池へと進む旅です。
ルートの詳細図はコチラ⤵
それでは、行きましょう!
なかなか遠いぞ大楠山
畠山から竹林を下り、不動橋に到着したのが11時50分。
昼には大楠山に着きたかったのですが、出だしでイノシシの罠に引っかかったりして遅れてしまいました。
ちょっと急ぎましょう。
ということで、まずは横浜横須賀道路(横横道路)沿いに進みます。
地図上では、このまま行けば、1km少々で阿部倉温泉という場所に出て、そこから大楠山への登山道が続いている。
まあ、これだけ立派な道なら、迷うこともないでしょ。
と、すっかり油断モードでした。
しかし、途中でこの道は突然行き止まりとなり、その後、「ここは抜けられるはず」の里山に入り込んだりしてエライ目にあう。
地図では抜けられると思ったんだけど、この先は壁のように植物が密生していて、とても進むことができませんでした。
なので、再び戻り、もう一度道を探す。
どうやら、一度迂回して、横横道路を渡らなければ、阿部倉温泉にはたどり着けないようです。
ということで、恐らく登山道の入り口までは、直線距離で数100mの位置にいるにもかかわらず、大きく回り道をすることになりました。
( ;´Д`) ハァ・・・
そのかいあって、ようやく「阿部倉温泉」の標識を発見
ここをまっすぐ行けばいいんだな、よしっ!
その後、横横道路のアンダーパスをくぐり、ようやく登山口へ。
腕時計を見ると、12時30分。
なんと、不動橋から40分もかかってしまった。
直線距離だと、わずか1km少々なんですがね。
ということで、少し急ぎ足で進みます。
大楠山はしっかり登山道が整備されていますが、植生はジャングル風!
平均台みたいな橋が架かってる。
遊園地みたいで面白い!
沢沿いの道を進んでいきます。
森の中は明るくて、気持ちよく歩ける。
実は、大楠山は関東ふれあいの道のルートになっていて、ぼくは一度登っています。
しかしその時は西側から登ったので、この道は通っていません。
(今回は東側の登山道を登っています)
その時の旅はコチラ⤵
西側の登山道は、ジャングルというより涼しげな雑木林という感じだったなぁ。
大楠山の東と西で、だいぶ植生が異なるみたいです。
しばらく歩くと、沢沿いを離れ、長い階段が出現。
ここを登りきると、いったん平らな場所に出ますが、すぐにまた階段となります。
なんだろうこの網は。
なんと、大楠山はゴルフ場に隣接しているので、こんなふうにフェンスと網で防護されている個所があります。
旅の興を削がれますが、まあ、仕方がない。
それでも、トンネルみたいになっていて面白いから、楽しむことにしましょう。
山頂までの最後の登りも、階段が続きます。
休まず行きましょう。
よいしょっ、よいしょっ。
ようやく、13時05分、大楠山の山頂に到着
山頂には、いっぱい人がいます。
大楠山は標高242mの低山ながら、見晴らしもよく登山等も整備されているので、人気の山なのです。
山に慣れていないお子さんでも大丈夫ですよ。ぜひ一度!
見上げれば初夏の空
大楠山には展望台があります。
前回、関東ふれあいの道一周で旅したときも、この展望台に登ったなぁ。
今回ももちろん登ります。
南側を見ると、これから旅する武山(右)と三浦富士(左)が仲良く並んでいます。
その向こうが目的地、津久井浜の海岸。
まだ、遠いなぁ。
回れ右して北側を見ると、今日登ってきた二子山、乳頭山の稜線が。
そして、その向こうには、青い海。
心の中で「おおーい」と呼んでみる。
気持ちいい!
見上げると、真っ青な空に、真っ白な雲
小さな半島だけど、世界の広さを感じます。
いつまでも景色を眺めていたいけれど、実は雲の形が気になります。
午後になって、急速に積乱雲が発達してる。
大気が不安定になっているようです。
雷が鳴るかもしれません。
やっぱり、ちょっと急いだほうがよさそう。
ということで13時20分に大楠山を後にしました。
難所を越えて沢山池へ
展望台を降りると、先ほど通ったゴルフ場脇の道を戻ります。
ここから、大楠山の南側尾根を下り、沢山池(たくさんいけ)へと抜ける計画。
南側尾根の道に入ろうとしたその時、
「おーい、どこへ行くんだー?」
と呼ぶ声が。
振り返ると、登山道を管理している人でしょうか。
制服を着たおじさんが、ぼくを呼んでいます。
「そっちは道がないよー」
ぼくを心配してくれている様子です。
「それとも、長坂のほうに行くんか?」
長坂とは、沢山池のある場所の地名です。
「そうですよー」
そう答えると、おじさんは納得したようでした。
しかし、道がない、というのは不安だな。
(;´・ω・) ドキドキ
しっかり地図を見て進もう。
南側尾根に入ると、急に人影がなくなりました。
しかし、道らしきものは判別できるので、迷うことなく進みます。
あと、この尾根は送電線が並行して走っているので、それも地点標定に活用できる。
しかし気になるのは、上空の雲。
明らかに、先ほどよりも黒く、低くなってきた。
しばらく行くと、通行止め区間が。
地図ではここが、沢山池のある長坂へ向かう右側の尾根と、横須賀方向へ向かう左側の尾根の分岐点になってる。
どうやら、横須賀方向には通れないようです。
幸い、長坂方向は大丈夫みたい。
看板がありました。
「ハイキングコースではありません」と書いてあるのが気になりますが、とりあえず道は正しいということで安心。
先に進みましょう。
確かに、ハイキングコースではないようです。
腰を屈めながら、通りましょう。
時には、少しだけど開けた場所もある。
そうするうちに、分岐点に来ました。
周りは樹木に覆われ、地形上どちらが正しい道かは判別し難い。
見ると、こんなテープが巻いてある。
消えかけているけど、←沢山池、長坂→ と書いてあります。
これは助かった。
( ;´Д`) ホッ
標示のほうに進むと、送電線の塔が見えました。
うん、方向は合ってる!
一応、道跡も続いているので、間違いないでしょう。
さらに尾根線を外さないように進んでいく。
ときどき、道が不明瞭になりますが、送電線は一般方向を知るいい目標になる。
地図上では、このあたりから尾根を外れ、沢山池方向に伸びる谷に入っていくはず。
尾根から外れるときは、道に迷いやすいので注意が必要です。
ちょっと気をつけよう。
すると予想通り、道が急な下りに変わりました。
足もとには、簡易的な階段が取り付けられているので心強い。
しかし、谷に降りると、人工物はなくなってしまいました。
加えて、草の茂りがすごい!
右側は沢になっていて、小さな崖があるようです。
落ちたら大変だ。
しかし、足元が見えない。
ますます草が・・・
( ;´Д`) うおー
とにかく、右側の沢に落ちないように気をつける。
道があるのかないのか、よく分からなくなってきた。
方向だけは維持するように、コンパスを確認しながら進みます。
すると突然、草が途切れて、橋が見えました。
やれやれ・・・
どうやら難所は抜けたようです。
振り返ってみると、とても通れる場所には見えないなコリャ。
橋を渡り進んでいくと、子供の声が聞こえてきた。
みると、何組もの家族が遊んでいます。
沢山池に到着。14時05分でした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次は、三浦半島縦走の旅の最終回。
武山から三浦富士を越えて海に出るまでのことを書きますね。
旅の続きはコチラ⤵
それでは、また。
( ;´Д`)ノ バイバイ
どうぞ読者になって下さい⤵